長谷川経営弁護士事務所

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2020.03.18

不可抗力条項

3月13日付フィナンシャルタイムズ(日本語訳版3月16日日経新聞)

「新型コロナウイルスの感染拡大の影響で企業法務を担当する弁護士が多忙を極めている。契約の破棄を検討したり,交渉案件の決裂を避けようとしたりする企業が増えているからだ。

弁護士らは集団感染に起因する法的問題の相談で,電話や顧客企業からの問い合わせが25%以上増えていると話す。

英法律事務所セドンズの紛争担当パートナー,イーファ・キーン氏は『これまで経験したことのない事態』だという。『記憶にある限り,企業間の契約やサプライチェーンにこれほど大きな影響がある問題は起きたことがない。』

企業の間には契約の不履行や遅延の免責を認める「不可抗力条項」の適用を求める動きが広がっている。この条項に基づいて手続きを取った中国企業の数はここ数週間で過去最高に上った。」

その他,サプライチェーンが寸断したり,M&A(合併・買収)交渉が危うくなったりしている顧客企業からの問い合わせ,検疫に伴う休みや疾病手当,従業員を守るための企業の義務などを定めた「新型コロナ」条項を別途,就業規則に加えたいという問い合わせも増えているとのことです。

国内企業でも,上記のような問題・相談が増えそうです。

その中でも,今日は契約書の「不可抗力条項(Force Majeure)」を取り上げたいと思います。

例えばこのような条項です。

(条項例)
1  地震,台風,津波その他の天変地異,戦争,暴動,内乱,テロ行為,重大な疾病,法令・規則の制定・改廃,公権力による命令・処分その他の政府による行為,争議行為,輸送機関・通信回線等の事故,その他不可抗力による本契約の全部または一部(金銭債務を除く)の履行遅滞または履行不能については,いずれの当事者もその責任を負わない。ただし,当該事由により影響を受けた当事者は,当該事由の発生を速やかに相手方に通知するとともに,回復するための最善の努力をする。
2  前項に定める事由が生じ,本契約の目的を達成することが困難であると認めるに足りる合理的な理由がある場合には,甲乙協議のうえ,本契約の全部または一部を解除できる。

要するに,いずれの当事者にも責任を問えない(予見・回避できない)ような自然現象・社会現象が生じた場合には,契約不履行をしてもその責任を負わない,ということです。

普段あまり重視していないかもしれませんが,昨今のような有事には効いてきます。

もっとも,何が不可抗力にあたるか,不可抗力にあたる場合どのような主張が可能かは,各契約書によって様々であり,新型コロナのような感染症が明示的に例示列挙されていない場合もあります。

不可抗力条項が問題になりそうな場合は,まずは御社の契約書を確認し,法的に可能な主張を整理したうえで,自社と相手方の両方の損害を最小化するという姿勢で交渉に望むべきでしょう。

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