長谷川経営弁護士事務所

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本年3月27日の参議院本会議で改正労働基準法が成立しました。

残業代などの未払賃金を,過去にさかのぼって請求できる期間(いわゆる消滅時効)が,現行の2年から「当分の間」3年に延長されます。

「当分の間」とは,珍しい表現ですが,実は微妙な理由があります。

4月1日から施行される改正民法で,消滅時効が改正され,一般に期間が5年となることになりました。

残業代などの未払賃金は,改正前の民法では,1年で消滅時効にかかるとされていたのですが,労働者を保護するため,労働基準法で2年に延長されていたのです。

ところが,民法改正により民法上の時効の期間が5年となったため,労働基準法が,かえって時効期間を短く修正し,労働者を不利にしてしまうという逆転現象が起こることになったのです。

そのため,労働基準法も改正の運びとなったわけですが,いきなり2年が5年となることは,経営者側へのインパクトが極めて大きいとして,強烈な反対論がありました。

その妥協の産物として,法律上は5年になりましたが,当分の間は3年ということにする,という玉虫色の解決で折り合いがついたというわけです。

ちなみに,「当分の間」とは,本年4月1日から5年経過以降,情勢をみて見直しを検討する,ということのようです。

なお,延長の対象になるのは,この4月に支払う分からになります。

厚労省の資料のリンクを貼っておきます。

https://www.mhlw.go.jp/content/000591650.pdf

いずれにせよ,経営者として未払残業代はゼロにしなければなりません。

ここ数年はかなり意識が高まってきていると思いますので,

こんな改正関係ないよと言えなければ,経営者としては甘いといわざるを得ないのでしょう。

固定残業代の定めを就業規則に定めるなど,工夫しましょう。

3月13日の朝日新聞より

「加藤勝信厚生労働相は,同日の閣議後会見で,新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて企業の採用内定取り消しが1件あったことを明らかにした。企業名などは明らかにしていないが,厚労省によると,製造業の企業に入社する予定だった今春に卒業する高校生1人だという。

各地のハローワークには企業から内定取り消しについての相談が複数寄せられているといい,ハローワーク側は休業補償の助成金を活用するなどして内定を取り消さないように助言している。」

経営状態の悪化に伴い,この記事のような採用内定取消などのヒトの問題が増えるものと思われます。

しかしながら,会社側が採用内定を自由に取消すことができないのは当然であり,そのような基本的なミスによって企業経営を危機に陥らせてはなりません。

(採用内定取消が無効となると,会社は多額の損害賠償を支払わなければならなくなるともに,当該社員を雇用しなければならないこととなります。)

今日は採用内定取消がどのような場合に適法となるかお伝えしたいと思います。

■採用内定を自由に取り消せるか

判例上,採用内定者と企業は,卒業できないことその他一定の事由による解約権を留保している労働契約(解約権留保付労働契約)を締結していると考えられています。

「解約権を留保する」とは,難しい言葉だと思いますが,簡単にいうと,入社までの間に,万が一虚偽の事実などが発覚したときは,内定を取り消す解約権を企業側が持っているということです。

解約できるのは,「採用内定当時知ることができず,また知ることが期待できないような事実であって解約留保権の趣旨,目的に照らして客観的に合理的と認められ,社会通念上相当として是認することができるものに限られる」とされています。

要するに,入社して業務遂行するうえで支障が生じるような重大事実に限られるのだと,考えてよいと思います。


逆に,その解約留保権以外の点については,雇用契約に入った者の試用期間中の地位と基本的に異なるところはないとみるべきであるとされています。


つまり,解雇の場合に準じる厳しい基準で考えるべきであり,自由にその内定を取り消すことはできません。

■ どのような場合に内定を取り消せるか

内定者に関する事情でいうと,提出書類の虚偽記載,健康状態の悪化,重大な犯罪行為,卒業できなかったときなどは,内定取消が認められる可能性が高いといえます。

業務の縮小など企業側の都合による事由で内定を取り消す場合は,経営状態の悪化に伴ういわゆる「整理解雇」の場合に準じて,以下の要素から判断されるものと考えられています。

①整理解雇の必要性があること(経営状態の悪化)

②整理解雇回避のための努力を尽くしたこと(他のコストカットなどの手段を行った)

③解雇の対象者選定について,客観的・合理的な基準を作成し,適正にこれを運用したこと(狙い撃ちなどでないこと)

④使用者が整理解雇を行うにあたって,当該労働者や労働組合と誠実かつ十分に協議しなければならないこと

要するに,安易な取消が許されるはずもなく,回避する努力を十分行ったにもかかわらず他の手段がなく,やむなく行う場合に,初めて許されるということになります。


なお,採用内定取消に関しては,過去に指針が発表されており(平成5年6月24日 労働省発職第134号),

・会社は採用内定取消の対象となった学生・生徒の就職先の確保について最大限の努力を行わなければならないこと

・学生らの補償要求には誠実に応じること

とされています。

採用内定取消が適法となるのは以上のような場合ですが,安直な道はありません。

ヒトの問題の失敗は,下手をすると倒産への一直線となりかねませんので,経営者としての感覚を磨き,専門家のアドバイスを得るようにしてください。

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